”好き”を上手に言う方法(前編)
「”好き”の魔力で心を揺さぶれ!」



感情を表現することには、メリットとデメリットがあります。
まず感情表現することのメリットは、
・共感を得やすい
・自分の人間性、人柄をいち早く理解してもらえる
・話の面白みが伝わる
・相手と自分との距離を縮める
・会場の雰囲気、相手の緊張などを和らげる
など。
また
感情表現しないことが招く事態としては、
・何を考えていてどう思っているのか伝わりにくい
・論点や結論が不明瞭になる
・話がつまらない
いっぽうで、
感情表現することのリスクとしては、
・誤解を招きやすい
・公平、中立性、客観性を欠く可能性がある
・相手を傷つけることがある
・自分との考え方や価値観の相違が明確になり過ぎ、
逆に相手との距離を作ってしまう恐れもある
・感情の表し方や程度によっては不快感を与える
などの事態が考えられます。

好き嫌いは、シンプルかつ話に深みを与える意思表明だ

人前で感情表現することのリスクは承知のうえで、
それでも、
感情を上手に表すことができる人は、
魅力的な話し手です。
なかでも今回と次回は、
「好き嫌いをうまく表す方法」について、
述べていきます。
今回は、
”好き”と発言することについて、です。
例えば、
同じような感情表現でも、
ひとつの花を見て、
「わー、綺麗!」
というのと、
「この花、好き!」
というのとでは、
どこかにニュアンスの違いを感じますよね。
もちろん、
その花を綺麗と思うのであれば、
おそらく、
好きなんでしょうけど、
「わー、綺麗、でもこの花嫌い。」
という言い方も、
可能といえば可能ですよね。
(不思議ちゃんと呼ばれる人は、
こういう発言が得意ですね。)

「好き嫌い」の表現は、ただの感動表現より深度が違う

この違いは、何でしょうか?
「わー、綺麗」が、
自分の心の動き、すなわち感動を表現しただけ、
なのに対し、
「この花、好き!」は、
自らの意志を積極的に表明しています。
ですから、
「わー、綺麗、でもこの花嫌い。」
のように、
感動を表した後でも、
意志表明として、次の言葉を接ぐことができる、
次元、深度の違う、感情表現なのですね。

好き嫌いの表明は、自分が話の主役になるということ

ただ、
上記の例でいう、
「わー、綺麗、でもこの花嫌い。」
の発言者が本当にいるとしたら、
ちょっと面倒くさい人だな、
と思いますよね。
百歩譲って、
「わー、綺麗、私この花好き。」
と順接での意思表明だったとして、
これは確かに、
それ以上の意味のない、無邪気な言葉のようにも思えるのですが、
言った人の言い方や、
聞いた人の聞き方、
その時の状況によっては、
「もしかして、この花を買ってくれ、ということ?」
と、勘ぐってしまうかもしれません。
「わー、綺麗」と言うだけなら、
「私はこの花を綺麗だと感じています。」
という、自己表現ではあるのですが、
この段階ではまだ、
花という対象物を主役に据えています。
これに対し、
「この花好き」では、
話の主体が、完全に私になっています。
言葉を換えると、
聞き手は、
「発言者の中に花を見ている」状態になります。
やっぱり、
ちょっと面倒くさいですね。


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