「敬語」は知らないと始まらない。語彙と、へりくだる気持ち。
自分らしい頃合いの敬語を身につける
「誰々が、○○する。」
という簡単な構文において、
○○する、という動詞の部分に、
尊敬の意を込めたい場合、
大きく分けて、
パターンが4つ存在します。
・お○○になる
・○○いらっしゃる
・れる、られる
・上述の「居る→おいでになる」のように、違う言葉がある場合、
その他、今ではあまり使われませんが、
あそばす、なども考えられますね。
前回の記事でも、
これらは、全部同時に重ねて使うことができるという話になりましたが、
特に昔は、
身分の違いが明確だったため、
相手に合わせて、レベルを変えると同時に、
重ね方を変えることで、対応していたわけですね。
たくさん重ねると、
より、恭しく、仰々しくなるわけです。
現代の私たちの日常では、
役職や年齢の違い、立場の違いなどによって、敬語を使い分けますので、
殿様に対するような恭しさは、
必要ありませんが、
そのぶん、
頃合い、塩梅が大事になってきます。
ポイントは、
自分らしい敬語。
敬語は、
その人らしさが表れやすい言葉です。
なぜなら、
その人と相手や社会との関係において、
へりくだったり、
相手を持ち上げたり、と、
「自分が考える自分のポジション」を
言葉にしているのが、敬語だからです。
ですから
使う敬語が綺麗な人は、
話し方全体が美しい、
という印象を持たれるわけですね。
敬語専用の言葉の語彙を増やそう
さて、
そんな、美しい印象を与える話し方をする上で
使うべき敬語として、
一番スマートなのは、
「居る→おいでになる」
「食べる→召し上がる」のように、
尊敬の意を備えた
それ専用の言葉の語彙を増やすことです。
なぜかというと、
お○○、
○○いらっしゃる、
○○される、
のような、
方程式の中に、一般の動詞を当てはめるだけの敬語は、
どこか、
・こなれていない、
・ぎこちない
印象がありますし、
また、
そういう形の敬語ばかりの話し方は、
言葉の使い方を知らない、
と受け取られてしまう恐れがあるからです。
せっかく敬語を使っているのに、
無理しているように、聞こえてしまうわけですね。
だからこそ、
「こなれた敬語」をスラっと自然に発することが、大事なのです。
例えば、
来る→お越しになる、おいでになる
見る→ご覧になる
寝る→お休みになる
話す→おっしゃる
食べる→召し上がる
行く、来る、居る→いらっしゃる
また、自分がへりくだる謙譲表現としては、
「○○させていただく」という型が
ほぼ方程式化しているようですが、
これについても
通り一遍に方程式に当てはめるのではなく
食べる→頂く
話す→申す、申し上げる
見る→拝見する
思う、知る→存じ(ず)る
など。
このような表現は、
・簡潔で、まどろっこしくないため
尊敬の表現がいやらしくならない
・表現が多彩になるうえ、
上品で、知性を感じさせる
などのメリットがあります。
敬語の語彙があれば、れる、られるを重ねなくて済む
上記のような語彙を増やした上で、
それらがカバーできない尊敬表現は、
やはり、
方程式で対応することになってきます。
一番のクセモノは、
れる、られる、です。
例えば、
走る、書く、を
走られる、書かれる・・とすると、
走ることができる、
あるいは、(盗塁で)走られた、のような、
可能・受動とまぎらわしいという問題。
さらに、
お走りになられる、
いらっしゃられる、
など、
れる、られるを重ねますと、
やや過剰に感じられるという問題がありますから、
注意が必要です。
これは私個人が、
自分らしい敬語として考えた場合ですが、
尊敬の意を含む専用の語彙を多用し、
カバーできない部分を、
お○○になる、
○○いらっしゃる、で表すことが出来れば、
れる、られるは重ねない、
このぐらいが、
自分らしい、相手の持ち上げ方だと感じています。
相手を持ち上げる前に、自分がへりくだる
また、
相手を持ち上げる尊敬表現が多すぎて、
ちょっと気持ち悪くなりそうな時は、
代わりに、
自分がへりくだる、
謙譲表現にしてみると、
バランスが良くなります。
相手が、
取引先であったり、
年上だったりする場合、
ついつい、
相手を主語にして、
それに敬語をくっつけることになるわけですが、
相手と自分との関係における話の内容であれば、
相手への尊敬語ではなく、
自分がへりくだる謙譲語で対応できるのです。
例えば、
「相手が(私の提案を)取り上げた」という場合、
相手を持ち上げようとすると、
・取り上げられた
・お取り上げになった、なられた
のような形になりますが、
自分がへりくだれば、
・お取り上げいただきました
・お取り上げくださいました、
と言う形になり、
尊敬語を何度も繰り返す話し方より、
かなりスッキリ聞こえるようになります。
スッキリ言える自分なりの言い方を模索すべし
最後に繰り返しになりますが、
敬語は自分らしい使い方が大事です。
自分らしい頃合い、塩梅です。
例えば、
相手と自分との話のなかで、
「相手が、先ほど、言った」
という内容を、
相手に対して言う場合、
あなたなら、
どういう敬語を使いますか?
(あなたが)先ほど
・言われた
・おっしゃった
・おっしゃられた
などのように、
バリエーションが考えられますよね。
そんななかで、
どれが一番自分らしいでしょうか?
私の場合は、
られるを重ねない「おっしゃった」ぐらいが自分らしいと思うのですが、
人によっては、
おっしゃられた、ぐらいに重ねるほうが、
なんだかしっくりくる、
という方もいらっしゃると思います。
敬語を使いこなし、
相手との関係性をより美しく表現したい、となれば、
語彙を増やすことと同時に、
自分なりの用法を模索することが大事だと思います。