説明する力をアップさせる「繊細な描写力」
「もう一歩踏み込んだ表現をしてみよう」
ストーリーのあるお話の語り方、
について、
考えがだいぶ深まってきましたね。
これまでの流れを
短くまとめますと、
作品や自身の体験談など、
既に頭の中に、ある程度まとまっている物語を話すときには、
まず聞き手に、
話の理解のために必要な情報を与えて、共有してもらい、
リアルな表現力で、
あたかも、目の前でそれが起きているかのように、
再現して、
お話を「追体験」してもらうこと。
その情報の与え方としては、
言葉の選択と、
語るべき情報の選択のセンスを重視すべきであり、
その選択のセンスというのは、
語り手である自分に直結している、
自分らしい切り口であること。
より詳細に説明するためにはどうすればよいか
そういう心構えで、
自分らしい話の切り口を持っているとして、
では、
情報を「より繊細に、より詳細に」説明するには、
どうすればいいのでしょうか?
説明的な語りをするときに、
上手な表現をするコツは、
「もう一歩踏み込むこと」
これに尽きると思います。
例えば、
怪談などで、
その日は生暖かい風が・・
などと
描写されるのは、よく聞きますよね。
これは、
その日の様子を、
体感的に理解してもらうために、
聞き手にぜひ共有しておいてほしい情報として、
お話の始めのほうで語られる、
説明的な描写であり、
効果的な演出のひとつなのですが、
ここで言う
「もう一歩踏み込んだ」表現というのは、
それが、
「どんなふうに」生暖かかったのか、
さらに詳細に描くことです。
じっとりと、とか、
ぬめっとするような、とか。
あるいは、
なまあたたか~~い、など、
音だけで描くこともできれば、
20度の気温のなかに、
32度ぐらいの熱風が交じり合うような、不思議な空気が・・
のように、
客観的なデータを集めて並べるだけでも、
表現は独特ですよね!
これが、
情報選択のセンス、
個性的な表現、
ということです。
いずれにしても大事なのは、
自分が一般的だと思うレベルの情報を、
「もう一歩踏み込んでみること」
なんですね。
ちなみに、
ただの生暖かさだけではなく、
じっとりとした生暖かさなら、
何やら、人間の情念のような恐ろしい予感を、
ぬめっとするような生暖かさなら、
何やら、人間以外の恐ろしい生き物の登場を予感させませんか?
そのあたりの言葉の選択は、
後から続くストーリーを知っている語り手の、
演出力、
語りの妙、となるわけですね。
「自分らしい」説明をするには
そして、
情報の選択で、
より、
その人らしさを表すためには、
「ある傾向」の情報を、
「複数」集めること。
これが、
一番の近道と言ってもいいかもしれません。
なにも、
変わった話し方を目指さなくてもいいんです。
そういう傾向の情報を、
異なる場面で、
何度か、
言ってみること。
例えば、
上記に挙げた
「20度の気温のなかに、
32度ぐらいの熱風が交じり合うような、不思議な空気が・・」
という表現をするような人であれば、
別の箇所での話の中に、
「その男が手にしていたのは、
刃渡り20センチ前後のナイフ、
いや正確には、
戦闘用のナイフ、ダガーだった。
もちろん日本国内では銃刀法によって規制されているものだ。」
のような言い回しをすると、
「あ、この語り手の特徴は、
客観的な数値で表現したり、
ナイフじゃなくてダガーだ、
というような、厳密性を求めたりするようなタイプ、
あるいは、
理系っぽいのか、
合理的な思考や俯瞰で現象を見られる人、
あるいはマニア気質の人・・」
などと、
語り手のキャラクターを、
聞き手に印象づけることができるわけですね。
自分はどういう傾向の言葉を好んで使っているか?
そういう「傾向の出し方」は、
人それぞれの可能性があり得るわけで、
それこそ、
自分が得意なやり方をすべきですし、
あるいは、
いくつかパターンを持って、
それらを自在に駆使できれば、
表現力は増していきます。
「例え話」が得意な人、
説明的な言葉よりも、「擬音擬態語」で表現するのが得意な人、
言葉よりも「表情の変化だけで語る」のがうまい人、
また、
同じ例え話をするにしても、
例える題材によって、
傾向はまったく異なりますよね。
何でも人間関係や恋愛に例える人、
何でも動物に例える人、
何でも科学に例える人・・
そう考えると、
「もう一歩踏み込んだ表現」のなかに、
その人らしい切り口、情報選択のセンスが表れるものだとも、
言えるわけですね。
自分らしい切り口を持ちなさい、
と言われても、
いまひとつ、ピンと来ない、
どういう言葉や、情報の選択が、
自分らしいのかわからない、
そういう人は、
いつも自分が言っている表現を、
もう一歩踏み込んでみる、
そういう側からのアプローチをしてみるといいかもしれませんね。
踏み込んだ表現を意識しながら、
口にした言葉や情報、
その傾向に気付くことが、
自分なりの切り口、個性に昇華されていくのだと思います。
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「自分らしい個性的な切り口」で話すためには(後編)