日本語を美しい発音で話すためには
「言葉が聞き取りにくいのは、変化が乏しいから」
話し方を磨きたい、と思う人の多くは、
いい声、綺麗な音を出したい、という欲求があるのではないでしょうか。
前回お話ししたように、
人が生まれ持つ声そのものは変えることができませんが、
音を、より魅力的にすることは、可能です。
そして、
自分の発する音をもっと思い通りにしたいと思うのであれば、
発音の仕組みから知る必要があります。
まず発音の仕組みを知ろう
声を出す、ということ自体は、
動物が唸り声をあげるのと同じなのですが、
人間は、出した声を
声帯や口腔内の使い方によって、変化させています。
それが、発音です。
私達は、
発声の最後の段階である調音のやり方を微妙に変えることなどで、
聞き手が識別できる「音の違い」を作り出すことができるのです。
そして、
その発音のベースとなっているのが、母音です。
母音の明瞭な変化が美しさに通じる
母音の基本は口の形の作り方です。
日本語の母音は、アイウエオ。
それぞれに決まった形があるわけです。
母音の口の形が正確な人の話は、
とても聞き取りやすいものです。
特に日本語の母音は歴史とともに洗練され、
原則としては、たった5つしかありませんから、
その違いを明瞭に表現することは、
「美しさ」に通じます。
では、
具体的に、
アイウエオと発音する時の口の状態はどうなっているのでしょうか。
ア)自然な口の構えでアゴを大きく開く。
上下の唇の間に指二本がたてにやっと入るぐらいの口の大きさ。
舌はアゴと一緒に下の方に下げて、唇は丸めない。
エ)アの口構えから、アゴの開きを閉じてきて、
舌の位置をアのときより前に持ち上げる。
唇は両端をやや左右に引く感じ
イ)エの口構えからアゴをだんだん閉じて、ほとんど開かない状態。
舌は、上歯ぐきの上の硬口蓋へ向けて、
ジーと摩擦音が起こる手前まで高く上げる。
唇は平たくわずかに開ける
ウ)イの口構えと近いが、
アゴの開きは、五つの母音のなかで最も小さい
舌先の位置を奥の方へ引っ込め、
舌の付け根に近い部分をやや緊張させて盛り上げる感じ。
唇はイより両端を左右から中央へ引き寄せる
しかし完全に丸めるわけではなく、外見上はむしろ平らな感じとなる
オ)ウの場合よりアゴを開き、
上下の唇の間に人差し指一本がたてに入るぐらいの大きさにする。
舌はウのときよりやや奥へ引き込む気持ちで、
アの場合より奥舌がうしろへ持ち上げられる。
唇は五つの母音の中で一番丸くして発音する
(硬口蓋というのは口の中の上部分で入り口に近い硬い所です)
母音の練習の仕方
母音の発音は、正確な口の形と舌の位置で決まります。
練習の仕方としては、
鏡の前で口の形を確かめながら
アエ、イエ、ウア、オア・・・など
各母音から次の母音に移り変わるような音を出してみることです。
母音が移り変わる途中の音を認識することで、
逆に、
綺麗な母音とはどういう状態なのかを知ることができます。
母音練習のコツ、一つ目は・・
「イウエオ」各音から、
「ア」への変化が明瞭になるように。
話が聞き取りにくいと言われる人の多くは、
唇の動きが小さく、
音の変化に乏しいことが原因です。
そういう人は特に、
「ア段」を明瞭にすることを心がけると、
聞き取りやすさが格段に向上すると思います。
アの音は口を一番大きく開けますから、
アが綺麗に出れば、
それに従って、他の音もよく出るようになるものです。
私がアナウンサーとして、発音に一番気をつけている点も、
ア段の音へ移り変わるときの美しさです。
母音練習のコツ、ふたつめ。
「アイエ」と「ウオ」、
このふたつのグループが明らかに違うのが、
上記の口の中の状態の詳細で言うところの、
「ウ」は、舌の付け根に近い部分をやや緊張させて盛り上げる感じ。
「オ」は、舌はウのときよりやや奥へ引き込む気持ち・・
と、説明の文言は難しいのですが、
要は、「アイエ」に比べて「ウオ」のほうが、
口の中の奥のほうの空間に意識があるんですね。
「舌を奥に」って、ちょっとやりにくい感じですけど、
舌を意識するよりは、
鼻の下を伸ばして上唇を前方に出す感じ、
といったほうが実践しやすいと思います。
唇を前に出せば、
結果的に、舌は奥に引っ込みますからね。
そして、「アイエ」グループから、「ウオ」グループへ、
口の形を変化させる練習をしてみましょう。
発音の癖のチェックポイント
また、口の形や表情、シワの出方などに歪みがあると、
それは発音にも癖があることを意味しています。
癖のないフラットな発音を目指すのであれば、
鏡を見ながらその点もチェックし、自分の特徴をつかむことが先決だと思います。
ぜひ
お試しになってください。
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