表現力を高める「語彙の増やし方」
違いを言い分ける習慣をつける
自分らしい言葉で話したい、
と思いながらも、
どこから手を付ければ良いのか、
わからないと感じる時。
普段自分が使っている言葉を見直し、
語彙を増やしてみることを考えるのも、
一つの方法だと思います。
語彙というのは
言葉のバリエーションということですから、
図鑑や辞典のような、
知識力とか常識力のようなものと
ご想像された方もいらっしゃるでしょう。
しかし
「コツ」はそこではありません。
ずばり、
「表現力を上げるために語彙を増やすのであれば、
形容詞、形容動詞、そのほか修飾語を多彩にすること」
が、
なにより先決だと思います。
ごく簡単な文章で言えば、
何が、どうだ。
私は、こんなふうに思う。
Aの、Bのような状態。
などのように、
主語や、
話の主体となるもの、そのものよりも、
どうだ、
こんなふうに、
Bのような、
という部分こそ、
話の面白さの核心であることは、
一目瞭然ですよね。
修飾語とは、
話し手の感動、感性を、
ダイレクトに、
克明に、
誤解されないように、
人に伝える
「ツール(道具)」であり、
そのツールを豊富に備えている人の話は面白い、
というわけです。
簡単な修飾語のバリエーションを増やして言い換える
では、
増やすべき語彙としての修飾語とは、
どういうものなのか?
なんでもかんでも
形容詞やら副詞やらを
身につければいいのでしょうか?
のっぴきならない(避けることも退くこともできない)、とか
みだりがわしい(乱れたさま)、とか
そのような、
聞いた人も「え?」と聞き返すような
言葉を身につけよ、というわけではありません。
ここでの「コツ」とは、
普段私たちが日常的に連発している「簡単な修飾語」の
バリエーションを豊富にすべし、
ということです。
簡単な修飾語とは、
例えば、
小さい、大きい、たくさん、少し
高い、低い、美しい、汚い
遠い、近い
かわいい
などなど・・・
いつも使っている平易な単語なので
いくらでも出てきますね!
でも、
その言葉が表している状態や気持ち、感動を、
もっと他の言葉で、的確に
表現するとしたら、どうするでしょう?
「チョー(超)・・・」
で済ませていませんか?
それを変えてみるのが、
とても効果的なのです。
例えばこの数行前に
「平易な」単語、という言葉を使っています。
これは、
「かんたんな」という単語をあえて使わないことで、
同じ言葉が頻発してしまうのを
回避しているわけです。
しかも、
意味合いが広く、さまざまな局面で使用される
「かんたん」という単語に比べ
「平易」というほうが
言葉の易しいさまを表すのに適しているのではないでしょうか。
それに対して、
なんでもかんでも「かんたん」で済ませてしまうのは、
「チョー(超)」を連発するような会話と
実質的にそう大差ない、
若者の言葉遣いを、
バカにできないレベルなんですね。
ニュアンスの違いを感じ取る「感性」
ではなぜ私たちは
つい同じような単純な言葉ばかり使ってしまうのでしょうか?
もちろん「平易な」という言葉自体は
みなさんご存知でしょう。
しかし、
広い意味を持つ「かんたんな」で済ませてしまうのは、
その時々で、よりふさわしい言葉はなんなのか
厳密に見極めようとする習慣がないから、
なのではないでしょうか。
言い変えれば、
意味合いを広く持つ単語を使うほうが
「楽」だからです。
そこをグッと我慢して
的確な言葉を探し出す努力をしなければ、
上達は望めません。
少し具体的にやってみましょう。
例えば、
「大きい」ひとつとってみても、
その大きい様(さま)次第で、
言葉は使い分けるべきです
巨大なのか、広大なのか、膨大なのか、甚大なのか
ゆったりしているか、余裕があるのか
立派なのか、いかつい、ごっつい、隆々としているのか
寛容なのか、存在感がある、雄々しい・・・
また、大きさを表現する手段として、
何センチぐらいの・・など、
実際の尺で表すこともできるでしょう。
・・と、ご覧のように、
ひとくちに「大きい」と言っても
状態の違いは無限に存在するわけです。
上に挙げた大きさの例を見るだけで
何がどう大きい(小さい)状態なのか、想像できますよね。
そのぶんだけ、
限定的で、端的な言葉だからです。
ニュアンスの違いを「知っている言葉で」言語化する
例題として、
大きい、だけではなく、
かわいい、についても、
考えてみましょう。
それが、笑顔だとしたら、
「どんなふうにかわいい」笑顔なのでしょう?
満面の
罪のない
無垢な
純真な
穏やかな
柔らかい
人懐っこい・・etc
いかがでしょう?
これを「ただのかわいい」で済ませてしまう人は、
ただの人。
選ぶ言葉にこだわって、
表現をもう一歩踏み込んで的確に表すことで、
俄然、
個性的になってきませんか?
そのとき使う言葉の選択ひとつひとつが
話し手の個性に直結しています。
それが
あなたらしさ、なのです!
このように、
「違いを言い分ける習慣」を大切にしてください。
そうすることで、
あなたの話は表情に富み、
人々を引き付ける魅力を備えるのです。