ずる賢いほどに効果的な「考えさせる間(ま)」のテクニック
話す途中で間を取ることによって得られる、5つの効果
「間」(ま)を使うことで、
効果的に、お話を語る、というテーマを考えています。
間、つまり、あえて無音を作ることによって
得られる効果は、
・時間の経過、一瞬あるいは永遠を感じさせる
・場面の転換を表す
・言葉の意味に違いを与える
・無音の間に、聞き手の想像力が高まる
・無音を破る音への集中力が高まる
など。
そして前回は、
間の効果による場面転換で、
イメージの世界は果てしなく広がる、
という話になりました。
話し手サイドの基本姿勢で大事なのは、
聞き手の理解とイメージの状態を思いやって、
話を進めること。
これによって、
語り手と聞き手が同じ時間とイメージを共有でき、
絆が生まれ、深まる。
これぞ、語りの醍醐味ですね。
「間のドッキリ効果を、巧みに使いこなせているか」
さて今回は、
時間と空間を飛び越える、というような、
ファンタジックな効果ではなく、
もっと現実的な演出法としての、間の使い方についてです。
それは、
「絶対に聞き逃されたくない言葉」を言う前に、
間をとるという技術です。
これは、
「言葉、話に意味の違いを与えるための間」に次いで、
実際に使う機会の多い、
間の用法の基本です。
誰でも、
思い当たることがありますよね。
では、
なぜ、間をとると、人は聞き耳を立てるのでしょうか?
間を取ると、人は聞き耳を立てる
例えば、講義の時間。
ノートをとるために、
ずっと下を向いていた学生も、
話し手が言葉の途中で静かになったら、
「どうしたんだ?」
と、
思わず話し手のほうを見てしまうはずです。
話している人が、
無音の時間を作ると、
聞き手にとってそれは、
とても不自然なことなんですよね。
その無音のあいだに、
もしかしたら、話し手が感極まって、泣いている可能性だってありますし、
こちらを睨んで立ち尽くしている恐れだって、
なきにしもあらず・・
声が途切れる=要注意
そのぐらい、
「間には、ドッキリ効果」があるわけですね。
これが、
音がある状態に対する、無音のギャップ効果です。
だからこそ、
無音の次に発せられる言葉が何かは、
聞き手にとって、とても重要になるわけです。
間が空いた時、聞き手が考えていること
人が話している時に、
何故か、間が空いた時、
聞き手は、
その間にはどういう意味があるのだろう?
と考えるはずです。
まずは、
泣いてる?
怒ってる?
など、話し手の心理状態に対して、想像を膨らませるでしょう。
これは、
人間の本能なのです。
相手が敵か味方か、
怒っているか、喜んでいるかを察知しようとするのは、
コミュニケーションの根源的な要素のひとつだと思います。
そして、
話している人が、黙る、
というのは、
聞き手にとっては、
この根源的な要素において、不自然さを察知した、ということ。
恐怖や警戒にも似た感覚なのだと思います。
その「不自然さ」を、
話し方のテクニックとして駆使しようとしているわけですから、
ずる賢いほどに、
効果的なのですね!
考えさせられることに、人は緊張感を持つ
また、このような間は、
聞き手に考えさせるという効果も発揮します。
例えば、
聴衆に絵を見せながら、
「これはどういう絵だと思う?・・・」
と言ってから間をとれば、
聞き手は、
その問いに対する答えを考えるでしょうし、
例えば、
何らかの理由で感情的になった時に、
「私がどういう気持ちなのか、わかる?」
という意味を込めて、
黙ってみる。
こうされると、
その原因を作った人なら、
それこそ恐ろしさを感じるほど、
効果的な間になるはずですよね。
「間は、叫ぶよりもよく伝わる」
んですよね。
間の効果を高めるための注意点2つ
間の後は端的に短く
そういう間の使い方として、
注意すべき点をふたつ。
まずひとつ目は、
間の後の言葉は、短ければ短いほど効果的であるということ。
あれこれ説明したい気持ちはぐっと抑えて、
端的に、
単語ぐらいの短さで言い表すことです。
せっかく作った間の後に、
ぐずぐず文章が続いてしまうと、
間の効果は台無しです。
また、間の後に続く単語が
極めて的確な表現に越したことはないのですが、
?が残るような単語でも、
インパクトがあれば、大丈夫。
間自体が、?なのですから、
その後の言葉が、また?であっても、
聞き手にとっては、
解決すべき疑問にヒントが与えられたようなもの。
ますます想像力が膨らんで、
この話題に夢中になってくれるはずです。
ぐずぐずしてしまう長い説明は、
その後からでも、遅くはないはずです。
間を連発しすぎない
注意すべき点、もうひとつは、
こういう間のテクニックを、連発しないこと。
使い過ぎは、NGです。
何かを考えさせる間は、
聞き手に負担を与えています。
それが何度も繰り返されると、
「またかよ~」
と、
考えるのが面倒になってきてしまうものです。
これは、
間だけではなく、
問いかけながらしゃべる場合にも、
気をつけなくてはいけないポイントです。
そもそも、
間で注意をひく、というのは、
「相当な重要性を伴っているはずのこと」
なんですよね。
それを何度も使ったら、
言葉の重さ、
話し手の信用、品位が問われかねません。
鬱陶しい話し手になるか、
巧妙な話術を駆使したことになるかの、境目ですね。
ですから
話し手は、
間のテクニックを使う状況判断が必要ですし、
それと同時に、
間を使う以外の聞かせ方、
話し方の引き出しの多さが、
大事になってくるわけですね!
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