「自分らしい」語彙や口調を身につけるには
「たくさんの言葉と出会っているか?」


私達は毎日、
意識的に、
あるいは無意識的に、
「自分の中に蓄積されている言葉」を
選択しながら生きています。
ですから本来は、
その時点で既に充分、個性的なわけですが、
多くの人は、
それだけでは、
自分は個性的ではない、と
思うかもしれません。
個性を発揮することが人間の本能だからこそ、
逆に、
個性、存在感の薄さに、
悩むのかもしれませんね。
そういう意味で、
個性的に話したいという願いは、
「なりたい理想の自分に、ふさわしい言葉」を
駆使して、
おしゃべりできるようになりたい、
ということなのでしょう。

なりたい自分にふさわしい言葉と出会うこと

私たちが、
自分の理想の話し方に到達するためには、
言葉、口調、言い回しとの
「出会いと蓄積」が必要です。
そしてその出会いは、
他人から得るものに、他なりません。
例えば、
口調について考えてみてください。
ある方言口調を
好んで、あるいは自然に使ってしゃべっているとします。
その方言は、
どういう過程で、自分のものになったのでしょう?
それは明らかに、
自分が生きてきた環境の中で、
身の回りの人が使っていたしゃべり方だから、
ですよね。
もちろんその中には、
テレビなどの影響も含まれるわけですが、
少なくとも、
自分が発明した口調、なんてないんです。
全部、誰かの影響を受けた結果なんですよね。
そんななかで、
自分にしっくりくる、
上記の言い方を使えば、
なりたい自分が使っているべき言葉と思える言葉、口調、言い回しを、
好んで使い、
それほどでもないものは、次第に忘れていった結果、
現在の自分の話し方があるのですよね。

口調は会話から、語彙は読書で身に付ける

特に口調は、
他人の話し言葉から
影響を受けています。
例えば、
同じように大学生生活を送った同じ年齢の学生でも、
社会人になった人と、
学校に残った人とでは、
わずか1年の間に、
話し方に大きな違いが生じていたりするものですが、
それは、
社会人になった人に、
自覚や責任感が芽生えたことももちろんなのでしょうが、
最大の原因は、
社会人に囲まれて生活することで、
社会人の口調が刷り込まれたことによるものだと思います。
それに対して、
語彙の豊富さ、言葉の知識の蓄積は、
話し言葉からは、
あまり得られない。
どちらかというと、
書いてあるものを読んで
身に付けることが多いようです。
聞いて伝わる言葉しか使いにくい話し言葉に対し、
書いた言葉は
その言葉の意味内容を、
細部まで正確に、消えること無く、表すことができるからでしょう。

言葉は使ってみて初めて、自分のものになっていく

そのようにして頭の中に蓄積された、
言葉のバリエーションや話し方の癖、口調は、
実際に使うことによって、
脳に定着していきます。
逆に、
使わない言葉は、定着せず、
どんどん忘れていきます。
そうしたフィルターを通して、
自分らしい言葉の選択、
自分らしい口調が、確立していくわけですね。
例えば、
同じような意味を持つ単語のバリエーションのなかでも、
漢語調を好むのか、
和語を好むのか、
その選択は好みの問題であり、
好む言葉を使った結果、
その人らしさが表現されます。
漢語調を好む人は、
論理的で勇ましく、
和語を好む人は、
感情的で繊細。
選んだ言葉が、
その人のキャラクターの表れであることは、
こうした例からも
理解できると思います。
また、
話し方が他人から影響を受けたからといって、
自分らしさがなくなったり、
まるで他人と同じになったりすることは、
あり得ません。
話し方の特徴や癖は、
よほど意図的に真似しようとしない限り、
そっくりにはならないのです。
だからこそ、
モノマネ芸人さんは、血の滲むような努力をするわけですよね。
このように考えてみると、
話し方の個性とは、
いかに自分らしい言葉を使えるか、
ということ。
そのためには、
多くの言葉、話し方のバリエーションと出会って、
それを蓄積し、
実際に話して使うことで、
定着させる。
この経験を通して、
言葉、話し方の蓄積は自分のものとなり、
磨かれていくのだと思います。

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