相手を乗せてしゃべらせる、うまい質問のしかた
「自分の聞きたいモード、相手の話したい気持ち」
人から上手に効率よく話を引き出すための
ふたつの心得は、
・その相手に話を聞く目的を明確に持つこと
・より良い条件下で充分な力を発揮してもらうこと
そのうえで、
絶対に外せない3つの要素を聞き出すこと。
前回の記事では、
そのあたりまで説明してきました。
今回は、
インタビューで相手といい関係を築きながら、
話を聞く、というポイントについてです。
気難しい相手もいるでしょうし。自分の聞きたいことをぶつけるだけじゃ、失敗するかも・・
相手の話したい気持ちを上げる工夫
相手から話を引き出す、
ということは、
自分が調子よくしゃべるだけでは、
なんともしがたいところがありますよね。
それは、
相手の「話したい気持ち」を上げて、
口を開かせ、言葉で表現してもらう、という部分です。
相手が気分良く話せるのであれば、
もちろん言うことなしなのですが、
気分はそれほど良くなくても、
「そこは言わせてくれ!」と、
つい語ってしまう、という状況も、
場合によってはアリなのかもしれません。
また、
インタビューの手法を応用すれば、
相手を怒らせた上で、
過激な言葉だけを引き出して利用することも可能です。
これも「相手の話したい気持ち」を高揚させた結果、
ということにはなりますが、
この記事では、
あくまで、相手と良い関係を築きつつ、
ということに限定してお話しします。
いずれにせよ、
相手からもっと貴重な言葉を引き出したいのであれば、
相手との関係性においても、
ひと工夫しなくてはいけません。
わざと怒らせるインタビューなんてあるんですね(笑)
聞き手が乗り過ぎると、無駄な会話が増える
まずはインタビュアーの側に、
「この人から良い話を聞きたい」という情熱が
あるかどうか、
そして
それを楽しんでいるか。
もちろん
事務的に話を聞かなければならないときもあるでしょうが、
自分の意識もコントロールして、
「もっと話を聞きたい」というモードのスイッチを入れることです。
この気持ちひとつで、
質問の仕方や、使う言葉のニュアンスなどの発想が全く変わり、
その結果、
返ってくる相手の言葉が「輝き」を帯びてくるものです。
ただし、そのおしゃべりが楽しくて仕方がない、
という状態も悪くはありませんが、
そういう時は、
往々にして、
話題の本質に迫るには至らないことがあるものです。
なぜなら、
その表面的なおしゃべり自体に、時間を費やしてしまうからです。
インタビュアーとしての自分の気持ちを整備する、
という意味でも、
「その相手に聞きたいこと」を集中して探り、
相手の言葉や態度その他いろいろな情報の中から、
それを発見すること。
こうしてインタビュアーは、
真の「この人からもっと話を聞きたい」モードに入っていくわけですね。
会話が楽しいだけではダメなんですね。
「この人からもっと話を聞きたいモード」のスイッチを入れる
このような自分の気持ちのスイッチの入れ方は、
おしゃべりが苦手、
初対面などで話題が不足する、
などのときにも有効です。
自分でしゃべるのが苦手ならば、
相手にしゃべらせればいいわけですが、
かといって、
相手にしゃべらせるにも、
そういう状態に入っていくまでに、
気持ちを整えることが必要ですよね。
そういう時には、
この「この人からもっと話を聞きたいモード」のことを、
思い出して下さい。
あえて、
自分をそういう気持ちにしてみること。
そして、
相手から、「質問の素(もと)」になる発見をすること。
そうすることで、
相手の「話したい気持ち」を上げて、
こちらはいくつかの質問をするだけで、
会話が長く続く、という環境を作ることができるわけですね。
相手から「質問の素(もと)」を発見すること。なるほど、自分で考えていった質問を浴びせるより、そっちのほうが自然ですね。
こだわりや個性を敏感にキャッチして、相手を乗せる
さて、そのような自分の熱意を意識した上で
相手のことを考えましょう。
相手に、よりいきいきと話をしてもらうためには、
聞き手は、相手を気持ちよく「乗せる」気遣いが必要です。
お世辞を言うのも、
そういう効果があるものですが、
あまり見え見えですと、逆に嫌う人もいますから、
注意したほうが良いでしょう。
お世辞とまでは言わないまでも、
相手がこだわっていそうな点や
相手の個性的な所を、
敏感にキャッチし、話に織り交ぜると
より円滑に進みます。
そしてそういった相手の特徴が
インタビューの筋に合致したりすると、
話は美しい流れになるものです。
お世辞を自然に言うのって難しいんですよね。
インタビューとは、質疑応答しながらお話を仕立て、深める共同作業
相手を気持ちよく乗せるだけではなく、
「自分自身の話にのめり込んでくる」ことも大事です。
芸人さんなど、
話で表現することを商売にしている人以外は、
自分の体験や主張を、
ひとつの「お話」に仕立てて持っているわけではありません。
非常にざっくりとした
あらすじとして認識しているものです。
それを、質疑応答しながらお話に仕立てるのが、
インタビュアーの役割でもあります。
そのためには、
相手の話に、突っ込んでみることが必要です。
「そこは、どんなところだった?」とか
「そのときは、どんな気持ちだった?」とか
「腹が立ったでしょう?」とか
これは、
前回記事でご説明した、
「そのときの気持ちを思い出させる」という、
聞き逃せない3つのポイントのひとつでもあるのですが、
インタビューされる人ひとりでは言いきれないような事柄を、
相手の話を聞きながら質問し、
話自体を深めていく作業です。
相手は、
質問に答えるだけなので、
気分も楽に、
自分の深層へと入っていくことができるんですね。
このようにインタビューというのは、
聞き手と話し手の
ジャムセッションであり、「共同作業」です。
歯車がうまく噛み合えば、
自分一人でトークしたり、
原稿に書いたりするような内容よりも、
深みや彩り、
視点、角度の違いのある話を表現することができるはずです。
あえて対談形式のまま出版される著作物が多いのも、
このような、インタビューの特徴が活かされたお話が、
読み手、聞き手にとっても面白いからだと思います。
インタビューが、ひとつのお話を作り上げる共同作業だとまでは、思っていませんでした。

