才能では成功しない

オススメ度★★★★☆

兎角、私たちは、
成功した人に対しては、

あの人は才能があったから成功したのだ、
という感想を持つことが多いと思います。

例えば、

傑出したスポーツ選手を見れば、
運動神経や身体能力が生まれつき高いのだろう、と思い、

学業で優秀な人に対しては、
IQがもともと高かったのだろう、

商売がうまくいった人なら、
商才があった、など、

先天的に優れたなんらかの能力を、
褒めそやす傾向があるのではないでしょうか。

ところが本著では、

「才能では成功しない」と断言。

成功者たちに共通する最大の能力は、
生まれつき持っているものではなく、

成長過程で身についた、
「GRIT=やり抜く力」であると説いています。

言葉を換えれば、

七回転んでも八回起き上がる、
諦めない心を育むことが大事であり、

成功した人を見て、
才能があったから成功したのだ、と思うのは、

自分はできない現実に対する言い訳に過ぎない、
というわけです。

 

「やり抜く力」の育成はアメリカ教育省の最重要課題に位置づけられている

著者は、
アメリカ・ペンシルベニア大学心理学教授、アンジェラ・ダックワース。

「やり抜く力」研究の第一人者で、
天才賞の別名を持つ「マッカーサー賞」受賞。

この「やり抜く力」というテーマ自体を、
アメリカ教育省が「教育の最重要課題」として提唱したほどで、

ハーバード大学の入試の評価方法や、
マイクロソフト社の採用試験に取り入れられているそうです。

アンジェラ・ダックワース氏は、

本著では全編を通して、
「やり抜く力」というひとつのテーマを、

実際にやり抜く力によって成功した人への数多くのインタビューや
様々な心理学的、社会学的な実験、
自らが考案した「グリット・スケール=やり抜く力測定法」

などの具体例で説明しようとしています。

例えば、

全米各地から優秀な人材が集まる陸軍士官学校は、
初期の訓練が特に厳しいことでも知られていますが、

無事最後に卒業することができるのは、
最初の入学試験を高成績で突破した人でしょうか?

あるいは、

同レベルの成績の子どもたちを、

良い成績を取った時に、

その能力の高さを褒めるクラスと、
がんばったことを褒めるクラス、

ふたクラスに分けた時、

どちらのクラスの成績が伸びたのか?

そして、そういった「やり抜く力」を育む環境とは、
どういうものなのか?

また、それができる指導者は、どういう人なのか?

科学的に実証しようとしています。

著者自身も、
ふたりの子供の母親ということもあり、

自分の子育てにおける体験談も交えつつ、
「現在進行中の学問」という生々しさが伝わってきます。

 

教育格差を生じかねない、と心配になるほど

実は私自身は、
結果にこだわるタイプで、

どんなに努力の過程が賞賛に値しようとも、

それで目標が達せられないのであれば、
意味がない、と、

どちらかといえば思ってきました。

教育者ではありませんし、
子供もいませんから、

褒めて育てる実践もしたことがありませんし、

おそらくそういう機会があったとしても、
努力をして結果が出なかった時に、

上手に褒めたりすることが、
できないだろうと思います。

しかし本著を読むと、

褒めどころは、
結果ではなく、
がんばったこと自体であり、

それによって、
その後、伸びる子伸びない子に差が出たことが、
現実の実験で、証明されているのですね。

こういった子育てや人材育成などの教育理論は、

これまでは、
人類の経験則として、なんとなく実践されてきたもので、

人づてに聞いた話や勘が頼りの、
極めて曖昧なものでした。

ところがこのGRITのように、
科学的に裏付けられた(に近い)状態のノウハウになると、

誰でも再現可能になるのが、
凄いところ。

人は一生で、
人を育てる機会を何度持つことがあるでしょうか。

あるいは、
そんなノウハウを知っている教育者は身近にいるでしょうか?

本著は、

誰しも手探りでやってきた子育て、教育を、
より確実なものにするために、

また、これを知る人と知らない人で、
子育て、教育格差が生じかねない、

重要なメソッドとして、
知っておく価値のある情報だろうと思います。